台湾旅行で日本人に大人気の観光スポットのひとつ、「九份(きゅうふん、ジョウフェン)」。
山の斜面に建ち並ぶ古い建物、石段の両側に軒を連ねるお土産屋や茶館、そして夕暮れ時に灯る無数の赤い灯籠。
九份のシンボル的な建物・阿妹茶樓(アーメイチャーロウ)の外観は、まるでスタジオジブリの映画「千と千尋の神隠し」の世界に迷い込んだかのよう。
※この場所がモデルになったわけではないらしい
私も2回訪れたことがありますが、本当に美しく異国情緒が感じられる場所です。(そして日本からの観光客がとても多い)
1回目は自分たちで交通手段を乗り継いで、2回目は現地ツアーで行きましたが、後者のツアーを申し込むのがはるかにラクでおすすめ。
今回は、この魅力あふれる九份の見どころ、有名な阿妹茶樓でのお茶体験、混雑を避ける方法、アクセス情報までくわしく紹介します!
九份ってどんな場所?歴史とノスタルジックな魅力
九份(きゅうふん)は、台湾・新北市瑞芳区に位置する山間の街。
標高約300メートルの山の斜面に張り付くように家々が建ち並び、その独特の景観が多くの観光客を魅了しています。
九份の歴史:金鉱で栄えた街
九份の歴史は古く、清朝時代には9戸の家族しか住んでいなかったことから「九份」という名が付いたという説があります(諸説あり)。

九份への入口
1890年代に金鉱が発見されると、一気にゴールドラッシュが訪れ、九份は台湾有数の金鉱の街として大いに栄えました。
「小上海」「小香港」とも呼ばれるほどの繁栄を見せ、最盛期には人口が数万人に達したことも。
しかし、1971年に金鉱が閉山すると街は急速に衰退し、一時はゴーストタウン化。
その後、1989年に公開された台湾映画「悲情城市」のロケ地となったことをきっかけに、ノスタルジックな街並みが再評価され、現在のような観光地として生まれ変わりました。

ノスタルジックな夜の九份
千と千尋の神隠しとの関係は?
多くの日本人観光客が「九份は千と千尋の神隠しのモデルになった場所」という噂を聞いて訪れますが、実は公式にはそのような発表はありません。

「千と千尋の神隠し」の油屋のような景色
スタジオジブリ公式や宮崎駿監督によれば、湯婆婆の経営する湯屋「油屋」のモデルは、長野県の「渋温泉」や愛媛県の「道後温泉」、そして東京の「江戸東京たてもの園」にある「子宝湯」などからインスピレーションを得たとのこと。
また、湯屋「油屋」のモデルはどこか、という質問を映画の公開直後からたくさんいただきました。この件について、宮崎監督に直接質問したことがありますが、監督の答えは、「色々な温泉が入っていて特定のモデルはないけれど、道後温泉は確かに入っている」とのことでした。
【中略】
映画の設定である「商店街の一角にそびえ立つ銭湯」について、大いにインスピレーションを与えたのは、「江戸東京たてもの園」の「子宝湯」(こだからゆ)です。ただし、子宝湯の建物自体は「油屋」のように巨大なものではなく、建物のイメージは幾分異なります。
【中略】
ただ、このような声が全国から寄せられたことからわかるのは、「千と千尋の神隠し」の湯屋が、ちょっと昔の日本では珍しくなかった建物を「象徴的に再現」しているという事実です。こうした点も、「千と千尋の神隠し」で描かれた風景が多くの日本人の琴線に触れ、感動を与えた一因なのかもしれませんね。
2003年1月 – スタジオジブリ|STUDIO GHIBLI
「千と千尋」の元ネタではないのかもしれませんが、実際に九份の夕暮れ時の風景、特に赤い灯籠が灯る光景は確かに千と千尋の世界観と驚くほど似ているのは事実。

赤い提灯が美しい
日本ではなかなか見られない、美しい景色であることは間違いありません。写真映えもばっちり。
九份のシンボル的スポット「阿妹茶樓」
「阿妹茶樓」九份の象徴的な存在
九份で最も有名な建物が「阿妹茶樓(アーメイチャーロウ)」です。
この茶館こそが、千と千尋の神隠しに登場する湯屋「油屋」にそっくりだと話題になった建物。

九份のメイン通り
石段の途中から見上げる阿妹茶樓の姿は、まさに絵画のような美しさ。
特に夕暮れ時、赤い灯籠に明かりが灯り始める時間帯は、幻想的な雰囲気が最高潮に達します。

建物の外観を撮影するだけでなく、実際にお店に入ってお茶を楽しむことも可能。
ただ、非常に人気があるためいつも行列ができています。
阿妹茶樓で本格的な台湾茶を楽しむ
阿妹茶樓に入店すると、まず入口付近にお土産コーナー。その奥に茶館のスペースが広がっています。

阿妹茶樓の店内にある看板
テーブル席や座敷席など、さまざまなタイプの席が用意されているようです。
【お茶の種類と料金】
阿妹茶樓では、台湾を代表する様々な種類のお茶や茶菓子を楽しむことができます。

阿妹茶樓のテーブル席

阿妹茶樓で出てきたお茶菓子
- 高山烏龍茶:台湾の高山で育てられた上質な烏龍茶。香り高く、すっきりとした味わい
- 東方美人茶:独特の甘い香りが特徴。ウンカという虫に噛まれた茶葉から作られる高級茶
- 鉄観音茶:深い香ばしさが特徴の烏龍茶
- 茉莉花茶(ジャスミン茶):花の香りが爽やかなお茶
料金は1人前で300〜500台湾ドル程度(約1,350〜2,250円)。
決して安くはありませんが、雰囲気とロケーション、そして本格的な台湾茶を考えれば納得の価格でしょう。
茶器も日本では見たことのない感じで面白いですし、店員さんも日本人に慣れているので不快な思いをすることはまずない。
行列で時間を食ってしまうのが難点ですが、一度は訪れたいスポットです。
台湾茶を実際に淹れる体験も
阿妹茶樓では、店員さんがテーブルごとにお茶の淹れ方をレクチャーしてくれます。
日本語が話せるスタッフも多く、丁寧に教えてくれるので安心。

阿妹茶樓での台湾茶の淹れ方レクチャー
【台湾茶の淹れ方の基本】
- 茶壺(急須)を温める:お湯を急須に注いで温める
- 茶葉を入れる:温めたお湯を捨て、茶葉を適量入れる
- 洗茶:一煎目のお湯はすぐに捨てる(茶葉を洗う工程)
- 抽出:二煎目から飲む。時間は茶葉の種類によって異なる
- 茶海(ピッチャー)に移す:濃さを均一にするため
- 聞香杯で香りを楽しむ:細長いカップに注いで香りを嗅ぐ
- 茶杯で味わう:小さな茶碗に移して飲む
一通り教わったら、参加者それぞれが実際に淹れてみます。
1人ずつお茶を淹れるので、店員さんが実演した分も含めて6人テーブルなら一人で7杯もお茶を飲むことに。。。笑

たくさん台湾茶が飲める
お腹がタプタプになるかもしれませんが、それも楽しい体験ですね。
窓から見える九份の絶景
阿妹茶樓の窓からは、九份の街並みと遠くの海を一望できます。

阿妹茶樓の外に見える景色
山の斜面に張り付く家々、蛇行する石段、そして遠くに広がる海。
この景色を眺めながらゆっくりとお茶を楽しむ時間は、まさに至福のひととき。
ただし、夕暮れ時は窓の外に大勢の観光客が押し寄せ、九份でもっとも画になる阿妹茶樓を撮影しようとします。

多くの人が阿妹茶樓にカメラを向けている
窓際の席だと、外からカメラを向けられることになるので、気になる方はご注意を。
九份のベストフォトスポット
豎崎路の階段
九份で最も有名な撮影スポットが、阿妹茶樓を見上げる「豎崎路(シューチールー)」の石段。
この階段の途中から阿妹茶樓を見上げるアングルが、最も”千と千尋っぽい”構図として知られています。

「千と千尋」のような雰囲気の阿妹茶樓
特に夕暮れから夜にかけて、赤い灯籠に明かりが灯る時間帯(17時30分〜18時30分頃)が絶好のシャッターチャンス。
ただし、この時間帯は大混雑するため、撮影スポットの場所取り競争が激しくなるので注意が必要。
【撮影のコツ】
- 早めに場所取りをする(17時頃から待機)
- 三脚は使用禁止なので、手持ち撮影で
- 夜景モードを活用
- 人が少ない平日がおすすめ
基山街の赤い灯籠
九份のメインストリート「基山街(ジーシャンジエ)」には、無数の赤い灯籠が連なっています。

階段沿いに赤い提灯がならぶ
この灯籠の列も非常にフォトジェニック。特に夕暮れ時に灯籠が灯ると、ノスタルジックな雰囲気が一層増します。
海悦楼や九份茶坊からの眺望
「海悦楼」というカフェからは、阿妹茶樓を見下ろす景色が見られます。
九份老街!海悦楼茶坊にて。 pic.twitter.com/C65ItSp4sO
— タシモ (@tacimo4669) May 17, 2023
混雑して入店できないことも多いので、行くつもりなら事前予約しておくのがおすすめ。
さらに高台にある「九份茶坊」では、九份全体の景色と格式高い建物やお茶が楽しめる。

趣のある九份茶坊の店内

景色のいいテラス席
阿妹茶樓はもう十分見たから九份自体の街やお茶を楽しみたい、という方はこちらがおすすめ。
九份のグルメとお土産
食べ歩きグルメ
九份の基山街には、様々な屋台や小吃店が立ち並んでいます。
時間のある方は、こういった店でご当地グルメを楽しみながら観光するのもいいですね。
- 肉圓(バーワン):肉餡をでんぷんの粉で包んだもの。「金枝紅糟肉圓」など
- 芋圓(ユーユエン):タロイモ団子のスイーツ。温かいものと冷たいものがある
- 魚丸湯(ユーワンタン):魚のすり身団子スープ
- 草仔粿(ツァオザイグオ):よもぎ餅。「阿蘭草仔粿」など
- 花生捲冰淇淋(ホアシェンジュアンビンチーリン):ピーナッツ粉とアイスを春巻きの皮で巻いたスイーツ
お土産におすすめ
- パイナップルケーキ:台湾の定番お土産。空港などで買うよりおいしいものが買える
- 烏龍茶:九份の茶葉店で購入できる
- 千と千尋関連グッズ:カオナシのぬいぐるみなど(公式グッズではないので自己責任で)
- 九份限定の雑貨:赤い灯籠のミニチュアなど
台北から九份への行き方・アクセス方法
【現地ツアーで行く】☆一番おすすめ
初めての台湾旅行や、効率よく観光したい方には現地ツアーの利用が一番おすすめ。
移動や乗り換えを考える必要がなく、日本語ガイドも聞けるので面白い。
私も、2回目は事前に申し込んだツアーで九份を訪れました。
- 台北市内のホテルや台北駅から送迎付きで、交通手段の心配不要
- 日本語ガイドが同行(※ツアーによる)
- 十分や深坑老街など、他のスポットも含めて効率よく回れる
- おすすめの撮影スポットや店を教えてもらえる
- 帰りは士林夜市で降車できるツアーも
料金:1人2,000〜4,000台湾ドル程度(約9,000〜18,000円) ※ツアーによる
所要時間:トータルで8〜10時間の日帰りツアーが一般的
私がよく利用している旅行予約サイトKlook(クルック)とKKday(ケーケーデイ)のリンクを貼っておきます。
どちらも日本語で予約でき、サイトの説明もわかりやすいのでおすすめ。
【電車+バスで行く】
- 台北駅から台湾鉄道(TRA)で「瑞芳駅」へ(所要時間:約40分、運賃:49台湾ドル)
- 瑞芳駅前のバス停から「788」「825」「827」「856」「965」「1062」番バスに乗車
- 「九份老街」バス停で下車(所要時間:約15分、運賃:15台湾ドル)
合計所要時間:約1時間〜1時間半
合計運賃:約64台湾ドル(約290円)
【高速バスで行く】
台北市内の「捷運忠孝復興駅」2番出口前のバス停から、「1062」番の高速バスが出ています。
乗り換えなしで九份まで直行できるので便利ですが、渋滞に巻き込まれることも。
所要時間:約1時間〜1時間半
運賃:98台湾ドル(約440円)
【タクシーで行く】
台北市内から九份までタクシーをチャーターする方法もあります。
3〜4人で利用すれば一人当たりの料金も抑えられますし、時間の自由度も高いので選ぶ価値あり。
料金:片道約1,000台湾ドル(約5,000円)
所要時間:約50分〜1時間
九份観光の注意点とアドバイス
混雑を避けるコツ
九份は台湾でも屈指の人気観光地のため、常に混雑しています。
特に以下の時間帯・曜日は大混雑するので注意。
避けるべき時間帯:
- 週末(土日)の15時〜20時
- 祝日や連休
- 台湾の旧正月期間
- 夕方の提灯点灯時刻(17時〜19時)
比較的空いている時間帯:
- 平日の午前中(10時〜12時)
- 夜遅く(21時以降)※ただし店が閉まり始める
- 早朝(9時前)※ただし開いている店が少ない
九份訪問時のおすすめの持ち物と服装
- 歩きやすい靴:石段が多く滑りやすいので、スニーカー必須
- 雨具:九份は雨が多い地域。折りたたみ傘を持参しましょう
- 上着:山の上なので、夕方以降は冷えます
- 小さめのバッグ:混雑した路地では大きな荷物は邪魔
- 現金:小さな店ではカードが使えないことが多い
九份周辺の観光スポット
金瓜石(ジングアシー)
九份の隣に位置する、かつての金鉱の街「金瓜石」。
「黄金博物館」では、金鉱の歴史や当時の生活を学ぶことができます。実際に220キロの金塊に触れる体験も人気。
陰陽海
金瓜石近くの海岸「陰陽海」。
鉱物の影響で海水が黄金色と青色に分かれて見える不思議な景色が楽しめます。
黄金瀑布
鉱物を含んだ水が流れ、岩肌が黄金色に染まった滝「黄金瀑布」。
自然が作り出す独特の景観です。
台湾・九份の観光ガイドと行き方 まとめ
台湾・九份は、一度訪れたら忘れられない魅力的な観光地。
混雑は時期によって覚悟が必要ですが、それを補って余りある魅力のある場所です。
効率よく九份を楽しむなら、十分など他のスポットと組み合わせた日帰りツアーがおすすめ。
日本語ガイド付きのツアーなら言葉の心配もなく、おすすめスポットや撮影ポイントも教えてもらえる。
帰りに士林夜市に立ち寄るルートだと、さらに台湾をギュッと満喫できます。
九份のノスタルジックな夜景は、一生の思い出になるはず。素敵な台湾旅行を!




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